祝福してください

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翌日の話 そういえば席替えの後の、この場所にも随分と慣れたなぁとガリ勉くんは思った。 当初はどうも落ち着かなかったし、間違えて以前の席に座ってしまって気まずい思いをしたものだが。 ただ、後ろの席に座っている男がリアルに充実した感じのクラスのリーダー格のような男で、昼休みにトイレに行って帰ってくると、そいつの友達がガリ勉くんの席を占拠していたりする。 知らない男(クラスメイトなのにガリ勉くんの無知ゆえに知らない)に、そこは自分の席だから退けと言う度胸もなく、ガリ勉くんは昼休みの初めから教室の外で過ごすことが多くなった。 しばらくは行き場もなくさまよう日々が続いた。 肌寒くなってきたこの季節に中庭に行く気は起きないし、そもそも中庭こそカップルの巣窟でガリ勉くんには居場所がない。 屋上に行ってみようかとも思ったが、おそらく中庭以上に寒いだろうし、施錠されていて屋上に出ることもできない。 そこでたどり着いたのが、人の出入りが滅多にない物品庫だった。 掃除の時間中に備品を補給する人間がいたりするが、昼休みに人が訪れる可能性はゼロに近い。 そこに一冊の文庫本と、買ってきた昼食を持ち込んで、一時間のユートピアを満喫する。 そんなつもりでいた。 「ここ、ほこりっぽくて好きじゃないんだけどー」 目の前に美沙がいる。 もぐもぐとおにぎりを頬張る彼女に、ガリ勉くんは低い声で尋ねる。 「どうしてウサミミさんがここに?」 「いやいや、だってガリ勉くん昼休みの間ずっと帰ってこないんだもん。さみしいじゃん」 「そもそも昼休みはそんなに話したりしていなかったはずですけど」 ガリ勉くんの発言に美沙はぽかんと呆けた顔をして頬を掻く。 「そうだっけ?」 「とぼけないでください」 「わかった。正直に告白すると『ガリ勉くんがユートピアを発見したに違いない。下手をすると放課後もそこに籠ってしまうかも。早い段階で発見して土足で踏みにじらなくちゃ』って、全力捜索しました」 ガリ勉くんはあきれたように肩をすくめる。 なんて女だ、宇佐美美沙。 「でも、ここならシャイなガリ勉くんでも昼休みに人目を気にすることなく私とお話しできるね?」 そんな恐ろしいことを無邪気な笑顔で言わないでほしい。  
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