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翌日の話
借りてきた映画のDVDを返し忘れていた。
近所のレンタル店の前で、美沙は尻込みしていた。
極端に低い位置で結われたツインテールを揺らして、財布の中身を確認する。
延滞料金、払えるだろうか。
ただでさえ、年末年始のために今月は節約しなくちゃいけないというのに、これは痛い出費である。
溜息も漏れる。
返却をさらに先延ばしするという手もあるが、延滞金を払う目処がつくころには延滞額が笑えない金額になっているだろう。
「はぁ、やだなー」
美沙が憂鬱な気分である理由は延滞金の問題だけではない。
借りてきたDVDの内容である。
とてつもなくつまらなかったし、好みの作品ではなかったのだ。
そんなものに高い金を払うのが癪に障る。
くわえて、借りてきたのはアダルトDVDである。
もちろん美沙は18歳未満だから、本来はレンタルすることなどできないのだが、勝手に親の名義で会員カードを作ったのだ。
意外とすんなり作れたので、美沙は18禁だろうと関係なく借りている。
しかし、まぁ、アダルトDVDの延滞金を払うというのは、また店員さんと向き合うことになるし、どんな顔をしていたらいいのかわからない。
ちなみに昨日の「ツインテールを後ろから掴んで~」のくだりはこのDVDの内容である。
それに付き合わされた(突き合わされた?)ガリ勉くんも災難であるが、美沙の現状も十分に同情できる状況であった。
店の中にある、返却ボックスにこっそり返して帰ってしまおうかとも思った。
けれど、もうこの店ではDVDを借りられなくなる。
美沙は意を決して店に入った。
レジカウンターを確認する。
女性!
よし、勝った!
美沙はどこか戦場を潜り抜けてきた兵士のような表情で、2000円のレンタル料金を払って帰ったのだった。
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