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翌日の話
テレビCMというのは凶悪だと思う。
美沙は居間のソファで寝そべりながら思った。
テレビから、ふとした瞬間に流れてくるCMというのはどうしても潜在意識に語りかけてくる感じがする。
おかげで最近の美沙はフライドチキンが食べたくてしょうがない。
しかし、フライドチキンなんてそう簡単に食べられるものでもない。
自分で作る気にもならないし、まずカロリーの問題がある。
ただでさえ、冬は引きこもりがちでお腹周りが気になるのだ。
ブラだってちょっとキツくなってきた。
これ以上大きくなっても合うブラが見つからなくて困るだけだし、カワイイ下着はサイズ展開も限られていたりするのだ。
一般的に見て美沙は引き締まっている方だが、それでも胸だけは特別に膨らんでいた。
テーブルの上に置いていた本を広げる。
ガリ勉くんが勧めてきたSF小説。
海外文学の翻訳文だけあって、言い回しが妙だ。
ガイドブックみたいなタイトルのくせに、内容は普通に小説で、荒唐無稽もいいところで。
しかもかなり皮肉っぽい。
映画化もされているらしいけど、人気作なんだろうか。
美沙は名前を聞いたこともなかった。
「ふわぁぁ……」
おもわずあくびが漏れる。
定期テストが終わって、ガリ勉くんは忙しいらしい。
やっぱり年末年始には色々やることがあるし、高校生で一人暮らしをしている身で大変なのだろう。
おかげで美沙は退屈だった。
ガリ勉くん、学校でもいつも眠そうだし。
何なら、年末年始は私の家に来ればいいのに。
なんて彼が絶対に受け入れなさそうな提案も考えたりした。
せめてクリスマスは。とか。
美沙はクリスマスが嫌いだった。
誕生日を祝ってくれる人もいないし、クリスマスはどこのラブホテルも満室で、行く当てが無かった。
だからいつも一人で、面白くもないテレビを見ていた。
今年はどうなるんだろう。
視界の隅に映る手袋から、意識的に目を逸らして考えたりしていた。
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