待ってましたクリスマス

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一緒にいられる時間は限られているから。 ずっと一緒にいられる気がしても、人と人はいつか離ればなれになる。 ガリ勉くんはいままで生きてきた十七年でそれを知っていた。 だから、最初から誰かと一緒にいて楽しいだなんて思わなければ。 そうやって過ごしてきた。 そして、美沙とこうして一緒に過ごすクリスマスも、今年で最初で最後だろうということは、容易に想像できた。 いつまでも二人ではいられない。 来年は受験もあるし、すぐに別れは来る。 彼女には彼氏もできるだろうし、自分もすぐに消えてなくなる。 ガリ勉くんはそう思っていた。 だけど、一瞬でも楽しいと思えれば、その時間に価値はあるのかもしれない。 少なくともクソビッチはそうやって生きているのだろう、と美沙から学んだ。 何もかもいつか失われていくなら、思い出は楽しい方が良い。 「紅茶を飲みすぎました。トイレに行ってきます」 彼がトイレに立つと、美沙も夕食の準備のために立ち上がった。 フライドチキンは面倒だと思ったけど、自分で作ってみるのも悪くはないと思った。 なにより、食べてくれる人がいるだけでやる気が出てくる。 油を温める。 水の流れる音が聞こえてきて、ガリ勉くんが居間に戻ってきた。 「何か手伝いましょうか」 「ううん。ガリ勉くんはそっちに座ってて」 「ウサミミさん、無限不可能性ドライブの説明って理解できましたか?」 「ぜんぜん。だからつまんなかった」 『銀河ヒッチハイクガイド』の話だ。 美紗にはSFは難しかった。  
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