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油に衣が落ちて、ぱちぱちと弾ける音がした。
クックパッドの内容を思い出しながら調理を進める。
うろ覚えだからちょっとだけ不安だった。
ガリ勉くんの目を盗んでスマホをちらちらと確認しつつ、料理を完成させていく。
その間、ガリ勉くんは銀河ヒッチハイクガイドを開いたり、手伝うことはないかとこちらを覗いていたりした。
もちろん、美沙は彼に手伝わせるつもりなんて全くなかった。
だから彼がそうやって耐え切れず、手伝いに立とうとしたときにちょうど料理ができあがるように仕上げた。
三十五秒後。
「うんめぇえええええええええええええええええええ」
「まさかガリ勉くんの口からそういう言葉が出るとは思わなかった」
「すみません。美味しすぎて素でも出ない言葉が出ました」
「素ですらないんだ……」
美沙はうれしそうに笑いながら、作った料理を口にする。
「っわ、誠に美味しゅうございますわ……」
「まさかウサミミさんの口からそういう言葉が出るとは思いませんでした」
「ごめん。素が出ちゃったわ」
「そっちが素だったんですか!?」
んなわけないじゃん、という美沙の苦笑とともに、テレビの電源を点ける。
クリスマスでこんな番組見ている人いるのだろうか。と不安になってしまう。
大抵、こういう日は借りてきた映画のDVDとか、外でディナーをしてきたりするもので、テレビ番組を作る側もやる気が出ないだろう。
最近話題の芸人がひな壇でスタジオの爆笑を誘っていた。
美沙もそれを見て楽しそうに笑っている。
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