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翌日の話
校庭の葉はほとんど散ってしまって、ずいぶんと寂しくなった。
それだけで世界全体が味気なくなったように感じるけれど、四季のうちの冬というのは地球が眠りに就く季節だ。
クマもうさぎも虫もみんな冬眠をはじめてしまうし、草木も春に向けて力を温存する。
それでも人間は動き続ける。
難儀な生物である。
「北海道って冬の自殺率が高いらしいですよ」
「急に重い話をはじめてどうしたの」
「いえ、なんとなく外を眺めていたら憂鬱な気分になったので」
風に揺れる葉もなければ、世界はあまりに静かすぎる。
冬になるたびに、言いようのない孤独感に襲われる。
教室に残った二人だけのために、あいかわらず火を燃やし続けるストーブがぱちぱちと音をたてた。
「やっぱり雪とかに囲まれると死にたくなるんですかね」
「えー。雪景色とか綺麗で素敵だと思うんだけど」
「それに毎日囲まれて、真っ白な風景に飽き飽きするんじゃないですか?」
「雪合戦とかやり放題じゃん」
「発想が稚拙ですね」
まぁ、そんな寂しい季節でも隣に寄り添ってくれる誰かがいれば話は別なのだろうけれど。
胸にわだかまる孤独感も解けてくれるかもしれない。
あるいは、雪という沈黙の景色と向き合うことで、自分自身が嫌になることもあるのだろうか。
ガリ勉くんは半分に開いた目で、面前の美沙を眺めた。
自分はこうして一緒にいてくれる人がいて、彼女と一緒にいると、自分という人間にまだ救いがあることを実感できる。
人と関わることも悪くはないと思うことができる。
「でも十一月って半端だよねー。クリスマスみたいなイベントもないし、秋の醍醐味みたいのもないし」
「たしかにそうですね。だけど、僕みたいな男はクリスマスとかハロウィンとか、浮かれたイベントがなくて落ち着いて過ごせるので安心したりするんですよ」
「そういえば、ガリ勉くん。クリスマスの予定は?」
「一か月も前から僕のメンタルをえぐってくるのやめてもらえます?」
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