30人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
大晦日の話
もう夜も遅い時間だというのに、街は騒がしい様子だった。
けっきょく年越しも美沙の家で過ごすことになったガリ勉くんは、ここ数日の間に出したらしいコタツに半身をうずめていた。
「え、年末に紅白歌合戦見るとか渋いね、ガリ勉くん」
「他に何を見るんですか。ガキ使とかですか?」
「ダイナマイト」
「渋いですねぇ……」
おせちの準備が終わった美沙は、すでに年越しそばの準備にとりかかっている。
もちろん麺は店で買ってきたものであり、彼女が打ったものではない。
「そういえば、北海道ではおせちを年末から食べるらしいですよ」
「え、なにそれ。じゃあ年越しそばは食べないの?」
「それも食べるんじゃないですかね」
「北海道の人、貪欲だなぁ」
紅白歌合戦では名前も知らないような演歌歌手が、聞いたこともない演歌を歌っている。
美沙は作業に一段落つけて、ガリ勉くんと一緒にコタツへ入ってくる。
「最近だと、演歌歌手の後ろで人気アイドルが踊ったりしてますよね」
「まぁ、若い人は演歌とか聞かない子多いからね。少しでもそうやって興味を引きたいんじゃないの」
「その程度で若者を釣れると思うなよ、って感じですね」
「ガリ勉くんが若者代表として発言するの、違和感がすごいんだけど」
ガリ勉くんも最近の若者として人気のアイドルも曲も知らない。
だからこそ年末は今年の人気歌手などのおさらいとして、音楽番組をよく見ているのだった。
「レコード大賞とか勉強になりますよ」
「勉強としてレコード大賞を見てる人って少ないと思うよ」
最初のコメントを投稿しよう!