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翌日の話
地球が丸いって話は嘘だと思う。
美沙は箱根駅伝を退屈そうに眺めながら、あくびを漏らした。
さっきからトップは独走状態。
順位の入れ替えもたいして起こらないし、エキサイトするシーンが一切ない。
おせちの残りを胃袋の中に片付けて、食器を下げる。
なんかガリ勉くんと続いて過ごしていたせいで、ガリ勉くん不足感が否めない。
これは本格的にガリ勉くんのこと好きすぎないか?っていう、若干の焦り。
恋にまで発展してしまったら取り返しがつかない気がする。
いままで身近で接してきた分、恋心なんて芽生えたら爆発しかねない。
美沙は新年早々に溜息をついて、ソファに突っ伏す。
思ってみれば、恋愛ってあんまり得意じゃない。
たぶん他人から見たら、私たちって付き合ってるように見えるんだろう。
だけど、まだ付き合ってないし。
いまさら付き合えないし。
彼と付き合うって話を考えるなら、もう色々と手遅れだろう。
もっと早く、ちゃんと二人の関係性をはっきりさせておくべきだった。
ガリ勉くんが私のことを親友って言ってくれたことは素直に嬉しかったし、胸がいっぱいになった。
だけど、やっぱりこの人とは恋人にはなれないんだっていう、そんな確信めいたものを得てしまったのも本当だ。
ガリ勉くんは優しい。
ニックネームに反して真面目きった性格ではないけど、やっぱり彼は優しい。
いつだって一番に私のことを考えてくれる。
一緒にいて楽しいわけじゃない。
だけど、いつだって一緒にいたい。
「あー、旦那さんにするなら、ああいうタイプかもなぁ」
美沙はぼやいてケータイを開く。
ガリ勉くんからメール。
添付された写真に、美沙が欲しがっていた福袋が映っている。
『たまたま余っていたので買いました。明日持っていきます』
いやいや、たまたま余ってるような代物じゃないんですよ、それ。
人気商品だし。それにまだ午前ですし。
べつに頼んでなかったのに。
美沙は頬が緩むのを抑えきれなくなって、にやにやしながら返信を送る。
「物で釣られるほど安い女じゃないんですよー」
『ちんちんに釣られる程度には安い女では?』
「そこは否定しないわ」
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