いつまでもこのままで

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翌日の話 明日から学校がはじまると思うと憂鬱な気分になって、美沙は買い漁った福袋の中身を整理していた。 やっぱり趣味じゃないものとかも多くて、お得感はあっても実際にお得なのかは判断しかねる、といった感じ。 年末年始、点けっぱなしだったテレビをぼんやりと眺める。 けっきょく、両親は今年も帰って来なかった。 最近じゃ実物を目にする機会はない。 美沙が学校から帰宅すると、家に誰かがいたという気配を感じる程度だ。 それが空き巣だったとしても区別がつかないだろう。 しばらく会わないと、顔もよく思い出せなくなるものだ。 以前は居間に飾ってあった家族写真も、目に触れるたびに癪に障って、片付けてしまったし。 すでに両親の顔はハッキリと思い出せはしない。 実際、二人とも不倫をしているのかも、今は事実か知らない。 彼らが不倫をしていると知ったのも数年前の話だ。 今では、その関係も終わっているかもしれない。 家族関係が終わっていることは間違いないけど。 テレビ映像を眼球に反射させながら、美沙は福袋を片付ける。 去年より福袋の数が減ったのは、単純に財布の中身が去年よりも少ないから。 去年の今ごろは、まだいろんな中年男性から数万単位の報酬をもらっていた。 あの人たちは自分が買った少女の顔を覚えているだろうか。 忘れていてほしいな、と漠然と思う。 美沙は、このまま家にいるのが嫌になって、買ったばかりの服に着替えて玄関を出た。 明日から学校がはじまるということは、予定なんて合わせなくてもガリ勉くんと会えるということだ。 そう考えれば、もうちょっとだけ前向きにとらえられる。 「って、私はガリ勉くんのいったい何なんだい!!!」 叫んでから、ぼそりと「親友だ」と自分に言い聞かせる。 恋なんて勘違い、なんて言葉を聞いた覚えがある。 だからこの感情だって、一時的な勘違いとか、そういうあれだ。 とか、いま抱えている感情を恋だって認めながら。  
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