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翌日の話
恋なんて勘違いの類だっていうのは、本当だ。
ガリ勉くんはもう少し女心というものを学んだ方が良い。
美沙は教室の机に頬杖をつきながら思った。
というのも、ただいま美沙はガリ勉くんが告白されたという話を聞いていた。
「バイト先に、この高校の一年生の女の子がいまして。たまにシフトが同じになることはあっても、ほとんど会話もしたことがなかったんですけど」
その子に昨日、バイト後に呼び止められて告白されたと言っている。
美沙は不服だった。
こんなつまらないメガネのどこがいいんだろうか。
デリカシーはないし、人のことをいつも馬鹿にしてるし、ガリ勉ってあだ名のクセにガリ勉じゃないし。
見た目だってごくごく平凡。可もなく不可もなくって感じだ。
って、自分で考えていて落ち込む。
そんな男と親友関係をだらだらと続けている女だという自覚はあった。
「それで、何て言って断ったの?」
「断ったこと前提での質問ですか」
「え、その子と付き合うの?」
「まさか。断りましたけど」
ガリ勉くんは肩をすくめて答える。
じゃあ別に断ったこと前提でもいいじゃん。
「そもそも会話も少ないような相手ですからね。しっかりと『君が好きなのは君の目の前にいる僕じゃない。君は僕を何も知らないでしょう。君が勝手に僕に恋をしたようなつもりになって、僕を理想化して、妄想で作り上げた僕の虚像に恋焦がれることは勝手だけど、それに僕自身が付き合う義理は無い』って言ってあげましたよ」
「うわ、鬼畜の所業ですわ」
「べつに、本当のことを言ったまでだと思いますよ。彼女と僕の関係で僕に恋をするなんてありえませんから」
「モテないくせに偉そうな説教を垂れてるところが、さらに鬼畜」
「僕がモテないことは関係なくないですか!」
あるよ。
モテないやつにそんな偉そうに言われたら余計にムカつくでしょう。
と、美沙は口には出さないけれど思う。
「次に告白されたときは『恋人がいる』とか、ちょうどいい言葉で断りなよ」
「せっかく告白してくれた相手に嘘をつくのは不誠実だと思います」
「相手を傷付けないことの方が大事なの。恋人として私の名前も使っていいからさ」
「ウサミミさん、本名って何でしたっけ?」
「うーわ、最低!!!」
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