30人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
翌日の話
美沙がぽちぽちと携帯をいじっている。
ガリ勉くんは目の前で本を広げているが、ちらちらと彼女の方に視線を向けていた。
「ねぇ、ちらちら見るのやめてよ。聞きなよ。『ねえ、今日は僕をかまってくれないんですか』って涙目で聞きなよ」
「どんなキャラ付ですか。いや、熱心に携帯を操作していらしたので」
「遊んでた頃の後輩がさ、相談してきて。アドバイス求められてるんだ」
「悩み相談?」
「そんなところ」
美沙はあくびをしながら、ぽちぽちとメールを打ちこんでいる。
「どんな悩み相談ですか?」
「今月ピンチなのにお金がないんだってさー」
「それで、どんなアドバイスを?」
「まず、なにより性交渉が大切だよーって」
ぶふーっとガリ勉くんは息を吐く。
いったい美沙は後輩にどんな意図を持って『セックスが大切』なんてアドバイスを送ったというのだ。
あまりに急な出来事に、ガリ勉くんは机に突っ伏しつつ、質問を続ける。
「それで後輩からは、何て?」
「性交渉のテクニック?を聞かれたよ。ほら、私ってけっこう得意じゃない、そういうの。ギリギリ、イケるかイケないかのラインを攻めるのが上手いんだよ」
何が上手いとか、そういう話をしないでいただきたい。
もう別次元の話になって来ていてガリ勉くんは話についていけない。
努めて、美沙がそんな行為をしている姿は想像しないようにしているけど。
意識したら、もう美沙を直視できなくなってしまいそう。
「まぁ、出すか出さないかは相手のさじ加減ってところもあるけど。おっさんなんて、若い女にちょっと触られただけで簡単にドバドバ出すよ。それでもあんまり出さないようなら、もう無理矢理出させるけどね」
ガリ勉くんは机に突っ伏して撃沈。
「あとは、じっくりと高めるっていうのも大事だね。『これ以上は~』とか言って恥ずかしがったりすると、たくさん出してくれる」
「ちょっともうやめてくれないかなぁ!!」
「どうしたの、ガリ勉くん。急に大きな声を出して」
「セックスの内容についてそんな緻密に語られたら怒鳴りたくもなりますよ」
美沙は、ガリ勉くんの言葉にポカンとする。
「セックス? 性交渉の話をしているんだよ」
「だからセックスの話でしょう?」
「いやいや、セックスの前の値段交渉の話だし」
「それは性交渉って言わねぇよ!」
最初のコメントを投稿しよう!