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翌日の話
「消しゴムって最後まで使えたことある?」
新品の消しゴムのビニールを剥がしながら、美沙がガリ勉くんに問いかけた。
その話しぶりからして、どうやら古い消しゴムを失くしたらしい。
ガリ勉くんは自分の筆箱から消しゴムを取り出してみる。
「そうですね。ある程度小さくなって使いにくくなると捨ててしまいますね」
「うわ、現代人。物の豊富な時代に生まれた子供!」
なんかイラッとくるリアクションを受けてガリ勉くんは眉をひそめる。
今自分が使っているのは使い始めてから一か月程度で、まだそれほど減ってはいない。
「そういうウサミミさんは自分の消しゴムを失くしてしまって、新しいものを買ってきたんじゃないんですか?」
「うん。まぁ、そうなんだけどね」
じゃあ人のことを現代人とかちょっと小馬鹿にしたように言わないでほしい。
いや、現代人なのは確かなんだけども。
ガリ勉くんは美沙の持っている消しゴムに視線を移す。
ありふれた、消しゴムで有名なメーカーのシンプルな消しゴム。
「小学生のころとか、匂い付き消しゴムって流行らなかった?」
「あー、持ってる子いましたね」
「あれってさ、ずっと匂い嗅いでると気持ち悪くなるよね」
「自分で持ってたことはなかったので共感しかねます」
「友達のやつとか嗅がなかったの?」
「何度か匂わせてもらったことはありますけど、そんな気持ち悪くなるほど人の消しゴムを嗅いでられないでしょう」
たしかに、と美沙は苦笑を漏らす。
「あと、お菓子の匂いのするティッシュとかもあったよね」
「あぁ、あったかもしれないですね」
「あれもずっと嗅いでると気持ち悪くなった」
「気持ち悪くなるまで嗅ぐのをやめなさい」
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