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翌日の話
いつのまにか、週末に図書館へ来るのもいつも通りの暇つぶしになってきたというか。
美沙は、特に予定が無い休日は基本的に図書館へ足を運ぶようにしている。
前は活字だらけの本なんてぜんぜん読めなかったのに、今では文庫本程度なら数日で読み切れる。
それに、図書館に来るとガリ勉くんと鉢合わせたりするし。
「ガリ勉くん、おはよう」
美沙の挨拶に、ガリ勉くんはあからさまに嫌な顔をして、頭を下げた。
「おはようございます」
「どうしたのガリ勉くん、テンション低いよ」
「いつも通りですよ。もしもテンションが低い原因があるなら、せっかくの土日なのにあなたの相手をしなくてはいけないってことです」
あいかわらず辛辣なガリ勉くんである。
彼の手にはハードカバーの新刊が数冊抱えられていて、図書館入口近くにある新刊コーナーから持ってきたのだということがわかった。
「ガリ勉くんって新刊はいつも持ってくの?」
「えぇ、なので、ここにあるだいたいの小説を最初に借りた人は僕だと思いますよ」
本ごとの貸出人の履歴は確認できないから正確なところはわからないけど、週単位で来て新刊を借りていくような人はいないだろうから、たぶんそうなのだろう。
この図書館はそれほど人気もない。
自治体の図書館なんて何所もそうなのかもしれないが、来ているのはメガネをかけた小学生か近所のおじいさんおばあさんばかりだ。
「それで、どうしてガリ勉くんは私の顔を見た途端に嫌な顔をしたのかな?」
「いえいえ、別に気のせいじゃないですか? もしも嫌な顔をした原因があるなら、せっかくの土日なのにあなたの相手をしなくてはいけないことです」
「それ何度も言われたらさすがに傷つくんだけど」
美沙が苦笑いでガリ勉くんの手に持っている本に目を移す。
「あ、エロいやつだ。はっはーん、ガリ勉くんはエロい本を借りていることを私にバレるのが嫌だったんだね。やらしいなー」
「やらしくないです。これは別にエロいわけじゃなくて、性的な文化に対して一石を投じる内容なだけです」
「物は言い様だね」
「うるせーです。なんであなたはいつも僕の恥ずかしい部分をぴったり当ててくるんですか」
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