SF -サイエンス・フィクション-

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ふと、風が吹いた。 ある有名な小説の言葉を借りるなら、風が吹くという表現はおかしいらしい。 風が吹くというのは、風が止まった状態の相対的な評価でしか表現できないが、風は止まることはない。ゆえに風は動いていない。 凪という一時的なものもあるが、それは一部の地域のみにしか当てはまらず…いてっ……変なこと考えてたらつまずいた。 服を払って、そこの階段に座ってみる。 ふむ、こうして見ると街はそれほど変わってはいないな。 空を見上げてみる。突き抜けるような青い空だ。だが、何が突き抜けているのか知らない。 もう一度、街を見る。 かわりない、あの頃だ。 俺たちは未来を守ったのか、それとも未来への変化を止めたのか、わからない。 しかし、さっきの言葉を応用すると、変化しない状態はない。つまり変化はしない。 もう一度、空を見上げてみる。 1つの白い綿菓子が浮かんでいる。 お、もう突き抜けることはできないな。 なぜか、安心した気持ちになった。 あの時、俺たちがいなければ、突き抜けるような青い空も 突き抜ける不安をなくす、この雲も、もしかしたらなかったかもしれない。 言葉遊びでは伝わらないけど、未来は変化した。 確実に――……
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