慌ただしい日常

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「失礼しまーす」 「おう」 科学室は季節に関係なくひんやりと無機質な感じがする 和泉は大体職員室より科学準備室にいる方が多いので、クラスの奴等も用がある時は科学室の隣のこの部屋に行く 先生に用なんて滅多にないけど 「今日これなー」 「うん」 これ、と後ろ向きのまま和泉が指差した場所には箱に一式実験用具が入れられて用意されていた 別に今更どうとも思っていなくても、苦手意識がある分少し緊張してる俺とは違い和泉は、…普通だな 「これを、こうやって並べて行って」 「今日何すんの?」 「燃やしたり、浮かせたり」 ワイシャツにスラックス、そこに白衣を着てる和泉は似合ってて様になってるし、いつもかけているフレームの赤い眼鏡を外して、幾分リラックスしてる素顔は清潔感があって、いかにも科学の先生 同じ顔で眼鏡。さとし君と似ててもやっぱり雰囲気は違う 用意自体はすぐに終わり会話もない科学室ってのは普段の倍気まずい…長居は無用だ 「終わったから行くよ」 「直」 「…何」   「飴あげる」 ころん、と机に置かれたのは棒のついたいわゆるペロペロキャンディ 「…何これ」 「ペロキャンだろ。やるよ」 「何で持ってんの?」
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