慌ただしい日常

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コンコン 「はい」 カラカラ、と扉を遠慮がちに開ける 「直」 「ごめん、遅くなった…」 「何やってたんだー?帰ったんだと思ってた」 蛍光灯のついた狭い六畳程の準備室 和泉は広い教壇にプリントの束を順番に並べて、何かの冊子を作っていた 「ボーっとしてたら、いつの間にか」 「ふ、そっか。そんな時間も大事だよ」 白衣を脱いでシャツの腕をまくった和泉は益々大人っぽくて、唐突にもう子供なのは俺の方だけなんだなーと思った 今更なんだけど、ぽんと納得いった感じ 「直さ、これ手伝ってくんない?」 「うん?何これ」 「月曜日お前等に配るやつ。もうすぐ進路の面談があるぞ」 「この時期なんだー」 「学校によって色々だな。今お前等二年の冬は色々考えるだろ。これでいいのかなーとかさ。ちょっとビジョンを持たない奴も意識出来ればなーと思って、会議で他の先生達と決めた訳」 さっき俺が感じてた事が今、和泉の手によって目の前に出て来る 悩むのも普通の事だって 「順番に重ねて行けばいい?」 「ああ。今日しか時間取れなくてなー。土日は出張だから終わらせないと」
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