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遠くから見てるだけだった和泉のセダン
真っ黒で、大事にしてるのか中も外も綺麗にしてる
車内はムスクっぽい芳香剤が薫って、運転する横顔は先生じゃない和泉だ
「疲れたか?」
黙ってる俺をちらりと横目で見ながら和泉が聞いて来た
「ううん。父さんの車以外って珍しくて、観察してた」
これは嘘じゃない。だけど理由を見付けてたのも本当
「何緊張してんの。別に知らない関係じゃなし」
可笑しそうに笑ってる。難しい距離だと思うんだけどなぁ
「和泉と幼なじみでも、知ってても、テストのヤマは聞けねぇなぁ」
「そりゃ言えないけどさ。分かんないところは家にでも聞きに来ていいよ。携帯教えておく」
そう言って携帯を取り出し、赤外線受信の画面にすると俺に放って寄越して来た
「して」
データ送信しろって事かな?
慌てて俺も携帯を取り出す
送信完了を知らせる文字が俺の携帯に表示され、ふと気付く
これ、他の皆も知ってんのかな
知ってるか…。和泉は皆に平等だ
「俺のデータクラスで回すなよ」
「…皆知ってんじゃないの?」
「皆知ってんなら直も知ってんだろー。生徒は誰も知らないよ。聞かれても 教えないし」
「…そう」
あれ
嬉しいぞ
「内緒にしててな」
「うん」
やっぱり俺達、幼なじみなんだなぁと実感した
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