慌ただしい日常

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俺の母親は「雪乃」と言う 父さんが言うには白い肌に綺麗なストレートのロングヘアにアーモンドアイのそれはそれは可愛らしい「天使」だったらしい アルバムの中身は少ない 俺が産まれて一月で亡くなったらしく、俺と撮っている写真は三十枚だけ 母さんが毎日一枚ずつ撮ってとねだって、最後の方は酸素やら心電図の管に紛れて俺が寝ている写真で、母さんとの写真は終わっている 写真集の中には、俺の知らない母さんで溢れていた 春夏秋冬で構成されているらしい写真集は、色鮮やかで命に溢れている 荒廃した街の中に粉雪が降り、その中に白いワンピース、白いファーの母さん それが最後の一枚で、不覚にも俺は見とれて目が釘付けになった これを撮った頃、年は俺と変わらないんじゃないかな… 「可愛い…」 思わず独り言も漏れる 父さんが上手い事妄想して、とんでもない美少女の母さんが出来上がっているもんだとばかり思っていた 写真集に写る母さんは、間違いなく美少女だ 自分の母親を見てるのに、こちらを真っ直ぐ見たカメラ目線に、目が離せなかった
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