136人が本棚に入れています
本棚に追加
あぁ、やってしまった。
『どうした?』
「あ・・・ごめ、」
『声がくぐもってる。もう布団の中か?』
「ん、・・・」
あぁほら。
やっぱりやってしまった。
声を聞いたら、絶対会いたくなってしまうのに。
「ごめん、もうねます」
なんだか自己嫌悪に陥って、
ため息交じりに呟く言葉。
そうすれば耳の奥にくすぐる、
『くくっ、とも』
「っ、」
『とも・・・聞こえてるだろ?』
「・・・ん」
『俺が今、どこに居るかわかるか?』
「・・・いえのなか?」
首を傾げれば。
ピンポーン、鳴ったチャイムの後に。
ガチャガチャっ、鍵の開く音。
ドアが開く音に、今度は閉じて鍵をかける音。
廊下を歩いてくる音がして、
開け放っていたベッドルームの入口に、
暗闇の中、明るい光が浮かぶ。
その音はすべて、耳から伝わるケータイの向こうからも。
最初のコメントを投稿しよう!