第1章

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大手企業、CBコーポレーション。 その受付に立つ彼女の名は、相原瞳。 すらりとした背丈は女性の中では標準だが、細身の体格と引き締まったあごのライン、ピンと伸びた背筋から、パッと見、本人の身長よりも高く見える。 誰が見ても大抵美人というだろうその顔は、ぱっちりとした目にスッと通った鼻筋、形の良い唇と、所謂“完璧”だ。 本人も至ってそれはよくわかっており、大学ではミスコンに出て優勝した経験もある。 そんな彼女は、入社試験時。 「それだけの容姿なら、芸能人にでもなったらどうだ?」 なんて、人事の人間に言われたのだが。 本人は秘書になるべくして入社試験を受けた為、そこは笑って否定した。 結果入社試験に合格はしたのだが、秘書課は今充実しているため空きがないとし、受付嬢なら採用できるということだった。 この大手企業は、流石大手なだけあってどの部署に所属になるか、またはその子会社へ向かわされるかは入社後の辞令次第なのだが、瞳の場合は、やはりその容姿から、受付嬢へどうだと先に打診された特別事例だ。 そして、この会社、今やトップクラス。 派遣社員を雇わない事も、有名だった。 正社員で入社できるということは、もしかしたら、いづれ秘書課へ異動できるかもしれない。 そんな期待もあり、瞳は二つ返事でその打診を受け入れた。 むしろ、お願いしたと言うべきだ。 受付嬢の仕事だって、ただ座っているわけではない。 この大手会社は来客も多いため、各部署、各役職、そして来客の顔、把握することが多い。 しかし瞳はそれを必死にこなした。 余裕があるように見せて、だ。 いつも笑顔を絶やさずに、会社の出勤時間のだれよりも早く。 出勤してくる社員と笑顔で挨拶する。 もちろん、飲み会の誘いも多く、瞳もその都度よく顔を出した。 自分が微笑むと、男達はみんな鼻の下をのばして寄ってくる。 仕事に慣れた頃には、秘書課に移動したいという気持ちは薄れ、どうやって一番いい男をゲットするかを考えるようになった。
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