霊――

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   自分以外に生きている人間の気配のしないアパートの一室。  ふいに、犬の遠吠えが聞こえてくる。  夜になると、いつも聞こえてくるのだが、この近所の何処に居るのか未だにわからない。  唐突に、遠吠えがやんだ。  なんとなく、呼吸を止めて、身構える。  空気が張りつめた気がしたからだ。  アパートの外の廊下を歩く音が聞こえた。  やけに響く。
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