64人が本棚に入れています
本棚に追加
*
学校へ向かう並木道の入り口、俺たちはある人を待っていた。
少し向こうの角から曲がってきたのは、小さくて華奢な彼女。
「あ、来た来たー」
「おっはー!」
俺らが手を振ると、ちょっと驚いたように目を大きくしてからにっこり笑った、うちの姫。
クラスのヤツらは皆『姫』って呼んでたけど、俺たちはなんかしっくりこなくてさ。
あえて名前を呼ばなかった。
「おはよう、佐藤くん」
「おう、おはよう」
「おはよ、佐藤くん」
「はは、おはよう」
しっかり目を見て、彼女は俺たちに別々に挨拶をしてきた。
今までのヤツらって、大抵2人まとめて『双子おはよう』とかそんなんばっかだからさ。
同じ名字のまして双子の俺たちに、わざわざ別々に挨拶するなんてちょっと驚いた。
俺ら二人顔を見合わせて、ニッと笑う。
なんか、すげーこの人。
桜花の姫になるって、こういうことなのな?
「しかし、どっちも佐藤くんじゃ、2人とも振り返っちゃうわよね」
僅かに首を傾げながら俺たちを見上げる彼女のこれは……独り言、だな。
昨日一日で、この人の特徴は大体わかった。
金髪のキイがこれにハマって、つぶやき!って叫びながら悶絶してたもんな。
確かに、可愛くて、面白い。
こういうの、俺たちも大好き。
「俺ら双子だし、空と陸でいいよ」
「そそ。俺らもその方が呼ばれなれてるしな」
言ってやれば、目の前の小さいのは、おお!っと人差し指を立てて一つ頷いた。
面白い。
「ありがとう、そうやって呼ぶことにするね」
にっこり。
前を歩きだした彼女は途中合流しだしたクラスメート一人一人をちゃんと見て挨拶。
彼女の歩幅にあわせて歩いていると、少し向こうに同じような集団を見つけた。
「あ、あれ、多分3年だぞ。俺の先輩いるし」
何気なく言いうと「空くんの先輩?」と返事され、中学一緒だったと説明する。
「俺の先輩も同じクラスみたいだな……」
「陸くんの先輩も?」
「あぁ、俺もサッカー部に届けだしたわ」
そうそう部活がさかんだしね、この学校。
「っていうか、よく俺が空だってわかったね?」
びっくり。
まさか、俺たちの区別付くのかよ!?
2人顔を見合わせて、満面の笑み。
そして、
「とも、おいてくぞー」
彼女の名前を呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!