64人が本棚に入れています
本棚に追加
「空ー?ね、この漢字ってこれで合ってた?」
「んー?あれ?ここ線一本足りなくね?」
「やっぱりそうだよね。なんか眺めてるうちにゲシュタルト崩壊してきちゃって。ありがとう助かった」
ともは姫会議の書類に線を一本足して、教室を出て行く。
「げしゅたるとほうかいって、なに?」
「俺に聞くな、空」
「「・・・」」
ケータイ取り出して検索。
おー、なるほど。
**
「えーっと、これとこれを足して2で割ってー・・・ここのと合わせてー・・・ふむ。ね、陸ー?これ、あってる?」
「んー?どれ?ふんふん、あぁ、大丈夫、あってる。って、とも。電卓使った方が正確じゃね?」
「ケータイで電卓探すより、陸に聞いた方が早い。じゃ、ちょっと行ってきます」
ひらひらと手を振って職員室に向かう。
ともは時々こうやって俺たちを頼ってくれる。
だけど、なぜか空と陸を使い分けるともに、俺たちだけじゃなく、ともの事をよく見てるアイツ等も首を傾げた。
「・・・俺に聞いてくれない」
ちょっと不貞腐れた蓮は置いといて、確かにクラス一番のともがこうやって頼ってくれるのは、なんかくすぐったいっつーか。
で、ある時俺たちは、ともが呼んだ方とは違う方が返事をするという、いつものスタイルで行ってみることにした。
「陸いるー?」
「うぃー」
「・・・空、陸呼んだんだけど」
「・・・チッ」
「?」
*
「空、ちょっとお願いしていい?」
「うぃー」
「陸、空にお願いしたいの」
「俺じゃダメなの?」
「空なの」
*
「空ー?」
「うぃー」
「・・・ちょっと、2人とも、いい加減にして」
やべっ
怒らせた。
珍しくともが眉間に眉を寄せつつ俺たちを見上げる。
めったにこんな表情はしないから、レアものなんだけど。
「なんなの?この間から。どうして呼んだ方来てくれないの」
「えー?だってさ、俺らどっちでも同じだろ?別に呼んだ方じゃなくたっていいじゃん」
なー?と2人顔を見合わせる。
ポケットに手を突っ込んで俯いたともを覗きこめば、きっと顔をあげた彼女はものすごい怒った顔をしていた。
あ、怒った顔も可愛いなって思ったけど、とりあえず俺たちは口をつぐんだ。
最初のコメントを投稿しよう!