灰色の月、花火の匂い

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膝丈で、細かいプリーツの入った白のスカート。 パンツスタイルが基本の私には、足元がスースーすることこの上ない。 「えー、いいじゃない! いつもズボンばっかりだけど、似合うじゃない。 足が長くて細いから、いいわよねー」 いえ、そんな美脚ではありません。 それなりにお肉は付いております。 「今日はデートなわけ?」 「いえ・・・お祭に行くんで」 「えー、夏の祭って言ったら、浴衣でしょ!」 「浴衣、持ってないんで」 松村さんは、ちょっと考えてから、ニコッとした。 「じゃ、貸してあげる。 今日は私、調整の日で昼までなのよ。 一回帰って、持ってきてあげる」 彼女はパート社員なので、時々、勤務時間の調整のため、半休の日があるのだ。 「いや、でも」 「ああ、サイズなら大丈夫。 古いので悪いんだけど、私の義母にもらった浴衣があるのよ。 彼女、すらっとしてるから、私にはサイズが合わなかったの。 ちょうど、あなたくらいだから」
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