灰色の月、花火の匂い

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星咲くんが、こんな態度を取るなんて、初めてだった。 何が、彼の怒りの導火線に火を着けたのだろう。 メールして聞いてみようかとも思ったけど、止めた。 何かもわからないまま、謝ったりするのもおかしいし。 長くついた溜息は、夜をことさら長く感じさせるものだった。 金曜日。 いつもより一本遅い電車に飛び乗ったら、松村さんと一緒になった。 「おはようございます」 「おはよう。 一緒になるなんて珍しいじゃない・・・スカートも?」 「へへ、変ですかね」 実は、直人君のお母さんと連絡を取りあううちに、直人君自身から 「絶対、オシャレして来てよ!」 と念押しされたのだ。 オシャレと言われましても、普段から実用一点張りの量産品ヘビーユーザーには、難問であります。 仕方なく、学生の時に血迷って買ったタンスの肥やしのスカートを、はいてみたわけだ。
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