灰色の月、花火の匂い

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「おはようございます」 「おはよう、森君。今から営業?」 彼は切れ長の目を丸くして、戸惑った様子でこちらを見ていた。 「史信ちゃん、どうしたの」 「あー、気づいた、森君も! 可愛いでしょう?」 私のスカートをつまんでひらひら揺する松村さんに、焦って布地を押さえる。 「ま、松村さん、足が見えますって!」 「足くらい見せちゃえー、減るものじゃなし」 「私の神経が減りますって!」 「・・・いいねえ」 ぼそっと呟く主任。 その視線は、私の足の方を向いている。 「な・・・見ないで下さいよ!」 おそらく私の顔は、真っ赤になっているはずだ。 混乱したまま、見上げてにらむと、彼はハッとしたように、口元に手を当てて目をそらした。 「もう、たかがスカートくらいで、大げさなんです! はいて来なきゃ良かった」
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