灰色の月、花火の匂い

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やっとのことで、事務所に向かう。 やっぱり慣れないことをするものじゃないと、実感した朝だった。 案の定、事務所に来ていた合田課長代理と、峰山君にも、スカートを冷やかされた。 新条さんは、目を泳がせながらも、褒めてくれた。 夕方。 更衣室で待機していた松村さんに、着付けをしてもらった。 浴衣なんて、子供の頃以来だ。 昼休みに試着したら、丈は問題なかったので、そのまま着ることが出来た。 松村さんの義母上に、ますます親近感。 「いいじゃなーい」 紫がかった紺の地に、白く抜かれた百合の花が、流れるように描かれている。 半幅帯は渋めのからし色。 髪も、まとめたお団子にえんじ色の簪をさしてもらった。 首元が涼しい。
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