灰色の月、花火の匂い

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「いいわー、女の子ねぇ」 連発しながら、スマホで写真を撮る臨時スタイリスト。 「あ、ありがとうございます」 「ドライバーも手配済みだからね! 楽しんで来て。 返すのは、また何かのついででいいから」 ドライバー? その時、コンコンとノックの音がした。 「両角さーん、用意できました?」 峰山君の声だ。 彼が送ってくれるってこと? でも、彼は確か、ママチャリ通勤のはず。 「運転手がお待ちですよ」 私が慌てて出ていくと、峰山君の後ろに森主任が立っていた。 「え?」 「あ」 「へえ、馬子にも衣装、ですねぇ」 しみじみ言う峰山君の頭を、私の後から出てきた松村さんが軽くはたいた。 「それ、ほめ言葉じゃないからね」
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