灰色の月、花火の匂い

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「そうよねぇ、女の子だったら一緒にオシャレできるわね」 「えー、おれ、弟がいいな」 それから、ふと亜希子さんが私の後ろを見た。 「何で、宗ちゃんがいるわけ?」 車をとめてからも、金魚のフンのごとく、くっついてきた森宗次朗さんとそのコバンザメの高井さん。 かくかくしかじかで、と私が手短に話すと、なぜか亜希子さんは大笑い。 「なるほどねぇ。 じゃ、みんなで行けばいいじゃないの」 「えー、オジニーはよそでデートしてよ」 「い、や、だ。 お前に保護者が付いてきてるんだから、俺は史信ちゃんの保護者だ」 「やーね、宗ちゃん。 直人からしたら、お邪魔虫よ」 私は単なる同行者なんですが。 こうして、祭を楽しむ親子連れ、その同行者一名、その自称保護者一名、そのおっかけ一名、という、何とも不可解な顔ぶれで、祭に行くことになってしまった。
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