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背の高さイコール強い、ではなかったけど、私は少し楽に背筋を伸ばせるようになった。
その祖父は、大学を卒業した年に、長く患っていた病気で亡くなった。
ポツポツと、私が話す祖父の事を、セイさんはじっと聞いてくれた。
「すみません、こんな話。何か、思い出してしまって」
「いえ、こちらこそ、いいお話を聞かせてもらいました」
バフッ。
タイミングよく、コロッケがくしゃみをした。
鼻を、前足でこするようにしてから、ブルブルッと体をゆする。
「ごめん、コロッケ。お待たせしました」
ベンチから降りてしゃがむと、コロッケに目線を合わせて声をかけた。
コロッケはフンフンと私の膝に鼻を寄せて、尻尾を振った。
まるで、「気にしてないよ」と言われたみたいだ。
いやいや、ファンタジーじゃないから、ちょっと思ってみただけ。
「コロッケはあなたが好きみたいですな」
「マフィン効果ですかね」
「いやいや、娘の婿も餌付け作戦してますが、なかなか慣れていないですよ」
「うーん、コロッケはかっこいいし、若いし、犬なのが惜しいですね」
チロッと横目で、コロッケがこっちを見る。
私は、その様がおかしくて、頭を何度もなでた。
「それじゃ、史信さん、良かったらまた来週もお会いできると嬉しいですな。おっと、ナンパじゃありませんよ。私には妻が」
「いるんですよね。大丈夫です、略奪しませんから」
ブハッとセイさんがふき出した。
「またね、コロッケ」
こんな週末も、楽しくていい。
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