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「ラリー、あとでチェロを聴かせてくれないか?」
「もちろん。弾いてあげるよ。奏はスペシャルだから格安でね」
「有料?」
「まさか」
くだらないやりとりに笑い合って、触れるだけのキスをする。
曲は何がいいだろう。
休日のパリの、穏やかで幸せな朝を彩る一曲・・・・
ここは、やっぱり、無難だけど、バッハの無伴奏チェロ組曲で。
クラシックに疎い奏でも必ず聴いたことがあるはずだ。
そうと決まれば、まずは腹ごしらえ。
オレはもう一度、奏の唇にキスをしてキッチンに向かう。
冷蔵庫からトマトとレタスを出す。
レタスをちぎるオレの隣で、奏がトマトを切る。
オレの頭の中ではすでに、バッハの無伴奏チェロ組曲が鳴り響いている。
静かに、オレたちを邪魔しない程度のささやかさで。
fin
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