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家に戻る。
やけに静かだ。
帰った途端に心配した奏が飛び出してくると踏んでたんだけど。
嫌な予感がしてベッドルームを覗くと、まだ、彼は寝ていた。
熟睡だ。
あの朝のように。
呆れてしまう。
やれやれ。
こいつには危機管理能力がないのか?
仕方ない。
方針転換。
オレはぐっすりと眠っている奏の唇に、そっと唇を重ねた。
やわらかい感触に柄にもなくときめく。
急に、昨夜のことがよみがえる。
この唇が、オレの体中に触れたのだと思うと、羞恥でいたたまれなくなった。
キッチンに戻ろうとしたが、ニットの裾を引っ張られ、そのままベッドに座らされてしまう。
オレの腰に両腕が巻かれ、背中に奏の顔がすりつけられる。
「ラリー、ボンジュー」
喋る時のあたたかい息を背中で感じる。
ちょっと、これは、マズい・・・・
恋人と迎える朝が、こんなに恥ずかしいとは思わなかった。
「ラリー?」
不審に思ったらしい奏が片腕はオレの腰に巻きつけたまま、器用に体を起こして座る。
彼の両足がオレの足の外側に並び、背中から抱きすくめられる。
右肩に彼の頭。
「うわ!ラリー、耳が真っ赤」
指摘するなよ!
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