第1章

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「ラリー、これ」 「さっき買ってきた」 「さっき?」 「さっき。お前を起こす前」 「ラリー・・・・」 奏はオレが出て行く前に起こさなかったことに、少しだけショックを受けている。 「驚かせてやろうと思って帰ったら、お前まだ寝てんの。ガッカリだよ」 オレは大仰に肩をすくめて笑う。 それから、傷ついている奏を見つめて言う。 「戻ってくるよ。奏のもとに必ず戻ってくる。もう二度と消えたりしない。これは、奏に信用してもらうしかない」 奏はしばらくオレの瞳を見つめ続ける。 ゆっくりと頷く。 「俺はあなたを信用しているよ。ただ・・・・・」 そこまで言って口ごもる。 わかるよ、信用してるけど、起こしてもらえなかったのが寂しかったんだよな。 オレは奏を抱きしめ、背中をポンポンと叩く。 「うん・・・・約束破ってごめんな」 「いや、そもそも俺がちゃんと起きれれば、こんなことには・・・・」 奏はため息をついて話しはじめる。 「以前はどこでも熟睡できて、目覚めもいいなんて、特技だと思ってたんだよ。あの朝以降は欠点にしか思えなくなった」
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