第1章

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そういうことか・・・・ 違うんだけどなぁ・・・・ 「あのさ、奏が寝ていたから、名残惜しくなったんだよ」 「寝ていたから?」 オレは抱きしめる腕を緩めて、奏の肩に額を載せる。 顔を見て話すことはできない。 「奏があの朝もし起きていたら、きっとうまくいってなかった。オレは、奏の前から消えることで、オレの中の“彼”も消せたんだから。・・・・オレは、この容姿がコンプレックスだった。ずっとね。でも、奏がオレを捜してくれているとわかった時、困ったけど、うれしかった。それはこの容姿のおかげでもあるって、素直に思えた」 奏の手のひらがオレの頭をそっと包む。 「そうか・・・・俺がラリーを捜さないことには、ラリーの気持ちが動かなかったんだな」 「そうだよ。しかも、オレが先に奏を見つけたから、落ち着いて考えることができた。それに・・・・ちゃんとアラームで起きれるんだから問題ないじゃん。次はちゃんと起こすよ。一緒にバゲットを買いにいこう」 奏がオレを抱きしめる。 少し強めの腕の力で、必要とされているのがわかる。 「容姿だけじゃない。大胆かと思えばナイーブ、物慣れてるような振舞いをする一方でシャイな一面を見せる。魅力的な性格をしているから、外見も魅力的なんだ」 その言葉は、オレの中のコンプレックスをあたたかく包みこむ。 なくなる訳じゃない。 でも、持っていても構わないものだと思える。 「ありがとう、奏」 抱きしめ返して、耳元で呟いた。
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