プロローグ

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芽依は呆れながら、冷めた目で文句を言う。 「普段は怖がりのくせに、こういうときだけ平気なんてねえ」 事実、そうなのだ。非科学的な『モノ』が怖いのであって、その他はそうでもない。幽霊やお化けの類は、どうもダメなのだ。 「ホラー系が嫌いなんだよ」 一瞬叫びそうになったが、そこは自嘲し声を落とした。話に夢中になっていたのか、いつの間にかホームルームが終わっていた。前の席の人に訊いたら、校内の案内が終わったあと、簡単に自己紹介をするらしい。それを訊いた僕は「適当でいっか」と軽く考えた。無性にトイレに行きたくなったので、席を立つ。 「どこに行くの?」 「トイレだよ」 「早く行かないと遅れちゃうよ?」 時計を見てみると、あと五分で始まる。慌てて教室を出て、トイレに向かう。間に合うように廊下を走る。前を見ていなかったのか、人とぶつかった。 「うわっ!」 咄嗟のことで受け身が取れず、後ろに倒れると思い、固く目を閉じた。だが、待てど暮らせど痛みがこない。痛みがこない変わりに誰かに支えられている感覚がする。不思議に思い、ゆっくり目を開け、 恐る恐る声をかけた。
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