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「死ね!」   男が、ナイフを構えて突進してくる。 避ける間もなくそのナイフは、 俺の腹へと深々と突き刺さった。 「おまえを殺せば、俺は……」   男はナイフを抉るように ぐりぐりと動かした。 腹の中で、内蔵が、血管が、 ブチブチと千切れる。 「これで俺は……」   引き抜いたナイフを床に落とすと、 男は縺れる足を賢明に動かし、 転がるように逃げていった。 傷口を手で押さえてみたものの、 焼け石に水。 腹からは 信じられない量の血液が流れていく。 すぐに立っていられなくなって、 膝をついた。 そのまま、前のめりに倒れる。 「だ、誰か……」   次第に、意識が闇に支配されていく。 俺はこのまま、死……。
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