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――空腹に耐え兼ねた聖が真壁に助けを求めたのは、大学に入って2週間目のことだった。
ケータイの番号とアドレスを交換して、昼食を一緒に取るようになっていた頃。ふたりで遊んだりはもちろん、こまめに連絡を取り合う事はまだ一度も無かった為に、真壁は聖からのメールに飛び上がって驚いた。
『もう俺はだめだ』とだけ表示するケータイに。
聖の住むアパートに慌てて向かった真壁が目の当たりにしたのは、布団からはい出て台所付近で力尽きた家主の姿。
『ひ、ひ、聖!? 大丈夫!?』
『……おー真壁ぇー……全然大丈夫じゃない……』
『うわ熱っ! 熱もあるじゃん!』
軽々と聖を抱き抱え布団に寝かせ、氷枕を用意して薬を買って、聖の容態が良くなるまで真壁は寝る間を惜しんで看病した。
そんな中、真壁が絶望したのは聖宅の台所の様子。
調理道具は片手鍋ひとつのみ、冷蔵庫にはジュースと何故かインスタントのラーメンが入っているだけであった。
大学に入った頃、聖は親に一人暮らしを反対された、と笑いながら言っていた。
その時に聖の親が何故彼の一人暮らしに反対していたのかわかった。
聖には、生活能力がない。全く。
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