第1章

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下川 顕人(しもかわ けんと)。 近くの大学に通ってる、俺と同じ21歳。 下川は、大学生から、ここのバイトに入った。 色素の薄い髪。白い肌。これで生粋の日本人だっていうんだから、ビックリだ。 キレイな顔で、いつも静かに微笑むけど、興味がないことには無表情。 下川が入ってから、俺が高校の時より女性客が増えたというのに、本人には関係ない。 そんなこと、彼には興味がないこと。 だって、下川は……………。 「………どうしたの?そんなに、穴が開くぐらい見て。」 どれくらい、見てたんだろう。 いつの間にか、沢山あった食器類はキレイに片付けられて、下川がエプロンを外している所だった。 「……………………っ、ごめん。」 「いいけどね。いくらでも、見てよ。」 静かに微笑む、下川。 「真山くーん。これ、おねがーい。」 先ほどの注文のコーヒーが出来上がったみたいだ。 「はーい。」 「マスター。上がらせてもらいます。」 「おー。お疲れ様ー。」 マスターに挨拶した後、下川は裏に行こうと歩き出す。 俺の横を通ろうとした時、誰にも見えないように、俺の指にそっと触れる。 俺の暖かい指に、下川の冷たい指が絡まる。 それだけなのに、なんだかゾクゾクする。 「………………じゃあ、また、あとでね。 …………『ユズ』。」 下川が二人の時にだけ呼んでくる、俺の名称。 「…………………うん。」 そう。 俺たちは、付き合っている。
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