補食者

一の話 上位種

実際このゾンビが人肉を捕食する理由は味覚よりもたらされる快楽、そしてもう一つが身体能力向上や根本的な「変化」らしくそれは牛肉や豚肉では起こり得ない、人肉によりのみ起こる変化らしい。

ゾンビと揶揄される由来は主に人を食うこと、そして人間とは比べものにならない運動能力が主な理由で、他に特別な理由があるわけではない。

授業では聞く限り人を食べると「強くなる」らしいが、まあ恐らく潜在的な能力が引き出されるとかそういう類のものだろう。

そんなことしなくてもまともな人間が敵うわけがないとは思うが、ゾンビにはゾンビなりのゾンビ事情があるのだろう、縄張り争いとか。

実際人間は彼らを認知してはいるが、見たことや対峙したことのある人間はどれほどいるだろうか。

少なくとも僕の周りにはいないし、僕自身まだ見たこともない。

もしくは身の回りで既にいるが気づいていないか、見た人間は既に生きてはいないとか、そういう不幸な顛末に至ってしまっているなら頷ける。

親世代すら見ていないというくらいだ。
僕も彼らを見ることなく人生を消費し、健やかなる日々を過ごし、さざ波のように人生を終えるのだろう。

一度くらいは見てみたいものだが、同時にただ「見てみたい」だけで関わり合いを持ちたいかと言われればそうでもない。

そんなファンタジーな世界に住んでいながら、それを感じることなく人生を終えていく焦燥感に苛まれながら、今日も学校へ行くとしよう。

そんな日常を、彼ら「オーガ」も感じていたりするのだろうか。