一の話 上位種

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「ただいまー」 扉を開けると同時にそう口にするが案の定返事はない、これが日常なので気にとめることはない。 鞄をソファーに放り投げ、上着を脱ぎつつリモコンでテレビの電源をいれる。 「市内某所にて、今日未明、またもや鬼による捕食事件と思われる遺体が───」 また、か。 ここ最近、オーガによる捕食と思われる事件が近隣で増えているらしく、地元メディアでもてはやされている。 元々捕食事件が無いわけではなかったが、ここ最近は隣町が大きな都市部のせいかはたまた縄張り争いの結果か、小都市程度のこの街でも例年よりも遥かに件数が多い。 それでも市で1ヶ月当たり精々5,6件程度の被害なのでそこまで大きな混乱はないのが現状だ。 上着を椅子にかけつつ、冷蔵庫を漁る。 キンキンに冷えた牛乳をコップに注ぎつつ再度テレビに目をやる。
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