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「これ、飲んでごらん。温まるよ」
ジャックがバーから持ってきてくれたのは、甘めのロイヤルミルクティーだった。
おいしい、、、。
「寒いと思ったら、、、」
彼の視線を辿ってホテルの入り口の方を見ると、粉雪が舞い始めていた。
「10年前のクリスマスイブの日、」 突然ジャックが話し始めた。
「あのころ僕はテツと同じ研究所にいたんだ。でもあの日、テツはラボ(実験室)に来なかった」
え?
「僕らの研究はCell (細胞)を扱う。Cellは生きてるから、一日だって待っちゃくれない。常に誰かがモニターしてる必要がある。なのにあの日、テツは来なかった」
、、、。
「とりあえず僕が彼の仕事をカバーして、電話にも出ないし、よほど具合悪いのかと思って夜、様子を見に行ったんだ。そしたら」
そしたら、、、?
初めて聞く、あの日の彼の様子。
国際電話で「さよなら」と哲に告げた、あの日の。
「外から見ても部屋が真っ暗で。いないのかと思ったけど何度かドア叩いたら、テツ、ドアを開けてくれて」
それで? 促すようにジャックの方を見る。
「目が真っ赤だった。真っ暗な部屋の中でパソコンだけが光を放っていて、"何してるんだ" って聞いたら、“日本に帰るフライトを探している” って」
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