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「出なくていいの?」
私の髪にキスを始めた哲は、「いい」 と無視を決め込んだ。
でも携帯はしつこいくらいに何度も鳴る。
「あああっ、もう、何なんだよ」
耐えかねた哲はポケットに手を突っ込んで、携帯を取り出した。
スクリーンを見ていた彼の表情が険しくなる。
「七穂?」
哲が申し訳なさそうな声を出した。
「ちょっと急に人に会わなきゃいけなくなった。緊急みたいなんだ。1時間ほど出ていいかな。七穂は疲れているだろうから、休んでて」
「うん」
「ついたばかりなのに、ほんと、ごめんな」
「いいよ、気にしないで」
実は私にも用があるのだ。
***
「綾菜のメモだと、この辺なんだけどなあ」
ふと目線をあげた。
「あった!」
ここは有名な女性下着専門の店。
外装からして、ど派手な赤とピンクで塗りたてられている。
「うあー」
入れるのかこんな店。がんばれ私。
― ここなら勝負下着をいくらでも揃えられますよ。
そう綾菜は言ったけど。確かにそんなもの、持ってないけど。
でもねえ。
この、あて布が5センチ四方しかなくてあとは紐だけとか、これ、身に着ける意味あるのっ?
いろんなモノが、はみだしまくりじゃないの。
手にとって恥ずかしくなって、慌ててラックに戻した。
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