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さあ、これからどうしよう。
昂ぶった感情のままに出てきてしまったが、考えてみれば今晩泊まるところがない。
ここはNYなのだから、宿もちゃんとしたところでないと危険だ。
とりあえずさっきの公園まで戻り、ベンチに座った。
人通りも多くて安全そうだから。
連なる高層ビルの灯りが滲んで見える。
黒人の男性が向こう側に荷物をどさっと置くと、何かを取り出した。
あれは、トランペット?
吹き始めたのは、、、賛美歌で有名な『アメイジング・グレイス』だった。
その優しいメロディに、いつしか頬が濡れ始めていたとき。
「すみません」 アクセントのある日本語。
顔をあげると、哲と抱き合っていた女性だった。
っ!
「、、、やっと、見つけたー」 息を切らして彼女が言った。
荷物に手をかけ、立ち去ろうとすると、
「待って! あ、あの、ニホンゴ上手くないけど、ゴメンね?」
焦りながら彼女はそう言うと、「テツのGFでしょ?」 と付け足した。
それがわかってて、あんなことしたの!?
ムッとして押し黙る。
「あなたがいなくなったって、テツがパニックしてた。どうしたの?」
私にそれを聞く?
「あなた、、、泣いてたの?」
驚いた声に、「あなたに関係ありません! 哲をよろしく!」
思いっきり皮肉っぽく言ってやった。
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