472人が本棚に入れています
本棚に追加
「よろしくって?、、、は?」
このレベルの日本語は通じないか。
「哲が好きなんでしょう!?」
「へっ? なんで?」
何でって、、、。
「抱き合っていたじゃないですか!」
とかなりな大声で言ってから、しまったここは外だった、とあたりを見回した。
よかった、日本語なせいか、誰も気にしてないようだ。
「抱き合ってた?、、、ああ!」
その人は急に腑に陥ったようにうなづくと、さっと頭に手をやった。
え、えええーっ!!??
目の前にいるのは、栗毛色のカツラをとった、黒い短髪の、けれど赤いミニスカートに蝶柄タイツでロングブーツ姿の男性。
スカート姿の、だ・ん・せ・い?
「ごめん、僕、トランスベスタイト(女装趣味者)なんだ」
!!!???
***
ジャックと名乗ったその人は、哲が10年前アメリカに渡った当時からの長年の友人だそうだ。
結婚まで考えていたGFと最近上手く行かなくなり、昨日ついに別れ話を切り出され、ものすごい落ち込んでいるのを見かねて哲が慰めていたところを私が見てしまったらしい。
その趣味のせいじゃ、、、と思ったのを見透かされたのか、ジャックは 「彼女とは6年以上付き合ってるから、僕の女装趣味のこともよくわかってる。むこうもコスプレ好きだしね」 と付け加えた。
誤解させてごめんね、とジャックは申し訳なさそうに言った。
「それにしてもテツはどこまで探しに行ったんだ?」
鳴らない携帯を眺めながらジャックは困り顔で言った。
「気温下がってきた。風邪引くといけないから、ホテルのロビーで彼を待つ、いいね?」
最初のコメントを投稿しよう!