第2話

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「…言われてみれば、女にしては声が低かったな」 「でしょ?アメリカ人だから余計気付き難いのかもしれないね。僕も最初分からなかったから」 「けど、日本語が達者なのは何故だ?」 「ああ、僕が向こうにいるときに教えたからね」 「へえ……」 「お蔭で、僕も英語ならなんとか喋れるようになったよ。まぁまだ発音が変だって、ニコに突っ込まれるんだけどさ」  そう言って楽しげに笑うコイツに、何故か腹が立った。  何でコイツはこうも無神経なのか…。 (空白の7年間は、アイツと仲良くやってたわけか。なら、ずっとそうしてれば良かったんだ)  そう、苛立ちを覚える自分がもっと嫌だ。  底知れない嫌気と不安が、 俺の心を締めつけた。 「――…仕事戻る」 「え、…待って!いっちゃん!!」  呼び止める駄犬を無視して、俺は店へと歩を進める。 「いっちゃん!今夜いっちゃんち行くからっ。話しよう!」  必死に訴える駄犬の声を背に受けながら、俺は静かに店の扉を閉めた。 (なんで今更、こんなにイライラするんだ……)  俯きながら唇を噛む。 「唯月…大丈夫か?」 「え……、あぁ…何でもない」  心配げに声を掛けてくれた邦久に、 悪いと思いながらも首を振り言葉を呑み込む。 (今日、ここに泊まろうかな…)  そんな冗談とも取れる考えを脳裏に浮かべながら、 今は仕事に集中しようと深く息を吸った。 【ツンデレ王子と放浪わんこ2】おわり。 2016.2.24
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