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「まだ? はやく、食べたい」
「……ッ」
言ってるのは勿論、バレンタインのチョコのことなんだけど。
艶っぽい顔して、悪戯に光らせた目はやっぱり絶対わざとだ。
私の反応見て楽しんでるっ!
「すぐ、つくる……」
言い返す余裕もない。
バクバク鳴る心臓が痛いくらいだもの。
あんなキス、はじめてで。
……変な声聞かれちゃうし。
は、恥ずかしすぎる!
逃げるようにキッチンへ――こんな時、オープンキッチンなのが恨めしい。
隠れたいんですけど。
丸見えなんですけどっ!
動揺だかなんだかで震える指先を誤魔化しつつ、お皿を出して、冷蔵庫で冷やしておいたケーキをのせる。
「なんだ、出来てんじゃん。美味そう、今年はケーキなんだ」
って、めちゃくちゃ見られてるし!
「まだ駄目、見ないで! コーヒー飲んで大人しく待っててってば」
追い払おうとしても、純平はじーっと私の手元を見つめたまんま。
やりにくいし、完成前の作業工程見られるの、なんか嫌だし。
……未だに火照ったまんまの顔に気付かれるのは、もっと恥ずかしい。
お願いだから、あっち向いててよ。
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