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今までいろんなチョコを作ってきたけど、学校に持って行って3人で食べる前提だったから、毎回持ち歩けるものだった。
今年は初めて2人きりで過ごすバレンタイン。
なおがいない……代わりに、ただの友達だった純平が今は恋人として隣にいてくれる。
ただの友チョコだった今までよりは、ちょっと特別感出したくて。
だって、初めて『彼氏』の――純平だけのために、作るものだから。
甘さをギリギリまで抑えたビターなガトーショコラ。
彼が好みそうな甘さ加減に辿り着くまでに、何度も焼き直してレシピを修正してきた。
これだけなら運べたんだけど、さすがに見た目があんまりにも物足りないから、可愛くトッピングもしたい。
家に招いてその場で仕上げなんて、すごく、特別感あるじゃない?
って、浮かれてた。
まさか、見られながら作るのがこんなに恥ずかしいなんて。
冷蔵庫からイチゴを出しただけで、純平は歓声を上げる。
「1個ちょーだい!」
と出された手は、
「私の手作りよりスーパーのイチゴがいいならどうぞ」
と言えば「待て」を言い渡された仔犬のようにしゅんと引っ込んだ。
……ちょっと、可愛い。
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