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ハンドミキサーのスイッチを入れてクリームを混ぜはじめると、それまでじっと見ているだけだった純平が立ち上がった。
どんどん泡立って固くなっていく様子が面白いらしい。
「それ、俺にもやらせろよ」
「え、ええ!?」
いつの間にかキッチンにまで侵入して隣に立っていた純平に、驚いて手元が緩む。
その隙に横からハンドミキサーを奪おうと純平が手を出して――、
「あ、ちょっ! 駄目ッ!!」
「わっ!? なにこれ、どーすん……やっべ、わああああ!」
ミキサーが回転したまんま、クリームの表面に変な角度で入ったせいで。
白いクリームは、見事なまでにキッチン中に撒き散らされた。
壁にも、床にも、食器棚にも、冷蔵庫にも。
私のエプロンにも、純平の服にも、顔にも髪にも。
「わ、悪ぃ、美紗。こんな風になるなんて」
「……い」
「え、何? ごめん美紗、顔にもクリーム付いて……」
――完璧に盛り付けてからあげたかった、ガトーショコラのプレートにも。
「酷い! 純平の馬鹿あっ!!」
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