bitterなケーキに生クリーム添えて

14/25
前へ
/28ページ
次へ
怒鳴った瞬間に、ぼろりとひとつ大粒の涙が落ちたのに気が付いた。 馬鹿みたい、こんなことで泣くなんて。 悔しくて情けなくて、気が付いたら余計にこみあげてくるものが止められない。 一生懸命考えて、何度も練習して。 特別にしたくて。 純平のために。 なのに、こんな。 「ばかあ……めちゃくちゃじゃない……」 ひっく、と、しゃくりあげる自分が子どもみたいで、ホントに情けない。 なのに涙が止まらなくて、純平はおろおろと慌てふためいていた。 「な、泣くなよ。悪かったって……俺ここちゃんと片付けるから。髪にも付いてる。洗ってこいよ」 ほんとごめん、と何度も謝ってくる純平は、全然分かってない。 キッチンがクリームまみれになったことなんて、今の私にはどうでもいいのに。 「は、はじめてだから……」 「え? 美紗?」 「初めて2人で過ごす特別な日だから、完璧にしたかったのに!」 盛り付けまで綺麗にしたかった。 味は純平好みに、見た目は可愛く、お店で出されるものみたいに完璧に。 なのに、せっかく順調に準備が進んで完成間際だったプレートにまでクリームが飛び散ってめちゃくちゃだ。 ぼろぼろ零れてくる涙をもう堪えようとも隠そうともせずに、そのお皿を指差して叫んでしまった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加