24人が本棚に入れています
本棚に追加
怒鳴った瞬間に、ぼろりとひとつ大粒の涙が落ちたのに気が付いた。
馬鹿みたい、こんなことで泣くなんて。
悔しくて情けなくて、気が付いたら余計にこみあげてくるものが止められない。
一生懸命考えて、何度も練習して。
特別にしたくて。
純平のために。
なのに、こんな。
「ばかあ……めちゃくちゃじゃない……」
ひっく、と、しゃくりあげる自分が子どもみたいで、ホントに情けない。
なのに涙が止まらなくて、純平はおろおろと慌てふためいていた。
「な、泣くなよ。悪かったって……俺ここちゃんと片付けるから。髪にも付いてる。洗ってこいよ」
ほんとごめん、と何度も謝ってくる純平は、全然分かってない。
キッチンがクリームまみれになったことなんて、今の私にはどうでもいいのに。
「は、はじめてだから……」
「え? 美紗?」
「初めて2人で過ごす特別な日だから、完璧にしたかったのに!」
盛り付けまで綺麗にしたかった。
味は純平好みに、見た目は可愛く、お店で出されるものみたいに完璧に。
なのに、せっかく順調に準備が進んで完成間際だったプレートにまでクリームが飛び散ってめちゃくちゃだ。
ぼろぼろ零れてくる涙をもう堪えようとも隠そうともせずに、そのお皿を指差して叫んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!