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「お呼び立てしてごめんね? 本当は私が届けるべきなのに」
「何、今さら。てか、別にわざわざ迎えに来てくれなくても良かったのに」
今年のチョコは、お届け出来るようなものじゃなくて。
仕方がないので、家まで来てもらった。
というか、徒歩5分程度の彼の家まで迎えに行って、戻ってきたところだ。
「キッチン貸してもらえたら、純平の家でも良かったんだけど……」
「え? もしかしてこれから作るの?」
「ううん、仕上げだけ。コーヒーでいい? すぐに用意するから、座って待ってて」
言いながら純平の後ろに回って、脱ぎかけているコートを腕から抜くのを手伝ってそのまま受け取った。
相手がなおでもすることだけど、どうやら純平はこのやり取りがお気に入りみたいで、振り返った顔はだらしなく目尻が下がっている。
「サンキュ」
言葉と一緒にこめかみに降ってくる、触れるだけのキス。
「もうっ」
嬉しいのを誤魔化しながら、純平のコートをハンガーにかけに行くフリをしてその場を逃げた。
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